iPad3の噂について調べてみた
Cortex-A9MP4かCortex-A15か
現状のiPad2が積んでいるのはCortex-A9の2コアです。Cortex-A9はコンフィグ的に4コアまで可能です。
その上位コアとしてCortex-A15があります。こちらもコンフィグ的には4コアまで可能です。
iPad3が2コアか4コアかという噂が出ているのは、どちらのコアが搭載されるかということから来ているのだと思います。
で、どちらが性能が高いのかということですが、Cortex-A15が載った方が性能が高い。
Cortex-A15が搭載される可能性ですが、サムスンが2011年11月30日に2GHz動作のCortex-A15デュアルコアプロセッサ「Exynos 5250」を発表しています。11月末にはサンプル出荷され、量産が2012年2Q(4月~6月)ということで、若干量産時期にiPad3の発売が間に合っていません。
Cortex-A9に関してはというと2012年2月20日~24日に開催されたISSCCにて、サムスンはCortex-A9クアッドコアの「Exynos 4412」を披露しています。こちらについては量産時期がいつなのかはわかりませんでした。
そんな「Exynos5250」「Exynos4412」ですが、2月27日から開催されているMWC2012のサムスンブースにて実機動作が発表されています。
Samsung Exynos 4412 & 5250 - MWC2012
ちなみにARMが発表しているデバイスに搭載されるARMのロードマップです。
- Exynos 4212: 32 nm, 1.2-1.5 GHz dual-core ARM Cortex-A9 CPU, ARM Mali-400 GPU
- Exynos 4412: 32 nm, 1.5-1.8 GHz quad-core ARM Cortex-A9 CPU, ARM Mali-400 GPU
- Exynos 5250: 32 nm, 2.0 GHz dual-core ARM Cortex-A15 CPU, ARM Mali-T604 GPU
- Exynos 5450: 32/28 nm, 2.0 GHz quad-core ARM Cortex-A15 CPU, ARM Mali-T658 GPU
ここまではサムスン製CPUが載ること前提で話を進めてきたが、サムスン製の「Exynos5250」「Exynos4412」のGPUにはMaliを使っており、iPhone,iPadが使っているPowerVR5と互換性がない。
サムスン側のことを気にしているのは、Appleとサムスンは仲がいいため。
アップルの次期 A6 プロセッサは TSMC が製造・サムスンとは決別?という記事があったが、あくまでTSMCは工場でしかないので、設計をしているわけではない。ARMのコアが製造できるのは、TSMC、サムスン、グローバルファウンドリーズ、UMCといったところ。
製造する場所はじゃあキャパが足りなくなったから工場変えるわ、と簡単に言えるものではなく、設計からやり直さなければならない。もっとも28nmだとサムスンはローパワーしかARMに対応していないので、スマフォなどのハイパフォーマンスについてはTSMCを使うしかないわけだが。
例えばiPhoneの場合ではどのように設計したのかケイデンスのサイトに書かれている。
上について半導体の設計がどのように行われているかを簡単に説明しておこうと思う。
(エルピーダが潰れたと騒がれているが、半導体がどのように設計しているか、あまり知られていないと思うので)
上の『Appleが設計・検証』と言っている作業だが、 プログラミングのようなハードウェア記述言語が存在する。Verilog、VHDLが主に使われ、他にSystemVerilogといったものもある。
まずは回路図を書く。
それをVerilogに直す。(上の回路とは対応してない。)こうして出来たものをRTL(Register Transfer Level)という。Verilogは下のようなものだ。
こうして出来たRTLをシミュレーションして実際に動くかを確かめる。Appleはケイデンスを使っているとのことなので、Incisive Enterprise Simulatorを使っているのだと思う。プログラミングと違って信号がすべて並列で動作するため、波形を表示して、信号が正しく動いていることを検証する。
iPhoneの回路規模になるとシミュレーションをするのに1本2時間とかかかっているはず。(サーバーの性能にもよるだろうが)
その1本というは数μsレベルのため、OSやアプリケーションを実際に動かすとなると数カ月かかってしまう。もちろん途中で問題があった場合には回路修正をし、一からシナリオを流し直す。スパコン京のCPUの設計に3年かかったり、インテルのCPU設計に3年かかったりするのは、こういった事情による。
ちなみにこういったシミュレーションソフトは年単位で数千万とかでライセンスする。シミュレーションを一度に何本も流すとなると、それだけライセンスしなければならない。お金を沢山もっているところは、それだけ早く市場投入できる。
そんなわけでシミュレーションではなく、エミュレータを使う。AppleはケイデンスのPalladium IIIエミュレータを使ったようだ。 Palladium IIIは下のようなもの。
パソコンのように見えるが中身はFPGAベースのもので、ケースの蓋を開けてもCPUクーラーが見えるということはない。
エミュレーションで何をやっているかというと、実際に物理的に回路を作っている。これによりシミュレーションよりも早く結果が出て来る。
早く出るといってもクロック周波数が遅いので、実際のLSIよりもずーっと遅い。年単位が月単位になるくらいのレベルだと思って欲しい。
AppleはiOSを持っているので、このエミュレーションでiOSを動かして消費電力が下げられないかなどを調べたと思われる。また『PCBの性能開発』までと言っているので、メモリーや3GPPのベースバンドチップなどと通信速度が足りているかなども検証していると思われる。
RTLができたら論理合成をする。要はRTLだと抽象度が高くて、実際に物が作れないので、LSIを作れるようにトランジスタレベルにしましょうという作業。Appleは、ケイデンスなのでRTL Compilerという論理合成ツールを使っていると思う。
そうして合成して出来たネットリストを実際に配置する。レイアウトという作業になる。
この作業はサムスン側が行ったそうだ。
インテルがCPUを発表するときにダイの写真を出すが、こんな感じに配置していくと思ってもらえばいい。 この時にライブラリをTSMCのを使うのかサムスン製のを使うのか決めておく必要があります。
GPUはPowerVR6を積んでくるか?
iPhone、iPadだけでなく、PSVitaもPowerVR5を積んでいるが、新シリーズとしてPowerVR6があり、CES2012にてPowerVRG6200とPowerVRG6400が発表されています。
とはいえライセンス開始という段階ですから、搭載してくるのは微妙かもしれません。
なのでGPUの性能を上げてくるのであれば、コンフィグを変えてくることになります。
iPad2ではPowerVR5は2コアでしたが、PSVItaと同じ4コアにしてくるというのでしょうか。
Retinaディスプレイ搭載か?
搭載されるディスプレイとして、噂で出ているのは、サムスン製のAMOLEDディスプレイ、シャープ、LG。
あとiPad3には関係しないですが、2012年3Qに7インチディスプレイを搭載したiPad miniを出すことがサムスン証券が発行した文章の9ページに書かれてたりする。